♪明治30年代、医学生や開業医に勉学の場を与えるための「医学文庫」(書籍館)が発起されています。全国各地にあった衛生会(医師会)が中心となって設立されました。
♪この医学文庫には「日本医学図書館」(東京・明治30年)、「長與衛生文庫」(東京・明治31年)、京都医学図書館(京都・明治31年)、大阪医学図書館(大阪・明治32年)、広島医学図書館(広島・明治33年)などがありました。市井に開かれた医学図書館でした。
♪「長與衛生文庫」は、長與専斎(1893‐1902)の還暦にあたり、個人の功績を顕彰するために設立された医学文庫ですが、明治期の医学図書館の発生を知る上でも大切なものです。
♪また明治期の医学図書館設立の流れには、各地の官立医科大学に設けられた文庫もみておく必要があります。東京大学医学部図書館、成医会文庫(慈恵)、長尾文庫(千葉)などです。
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♪「長與衛生文庫」と題する記事を3回にわたって「医学図書館」誌に発表しました。1986年のことです。松田明子さん(養育院老人学情報センター)、平川裕子さん(千葉県立中央図書館)に取材・調査の協力をえて纏めることができました。3人で長與専斎の孫にあたられる平山次郎先生を四谷の胃腸病院(現・平山胃腸クリニック)(平成28年 四谷より大京町に移転)にお訪ねしたのも思い出深い記憶となっています。
♪わたしの医史学散歩としては、もっとも遠地の長崎県大村市に専斎旧宅(松香館)(国立長崎中央病院 [現・長崎医療センター]敷地内)や古田山疱瘡所跡など、資料や史跡をみてまわりました。
♪まだ若かったからできたことですが、とくに長崎大学附属図書館医学分館では大変お世話になり、歓待してくださったことに、今更ながら感謝しております。医史学に興味を持っているというので、年配の人がくると思っていたようですが、若輩にもかかわらす、ご案内いただきました。
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「長與衛生文庫」の連載内容は以下の通りです。3回にわけてアップいたします。
(1)設立主旨の発表から開庫までの経緯
I. はじめに
II. 長與専斎と大日本私立衛生
III. 「長與衛生文庫」設立趣旨の発表
IV. 開庫までの経緯
(医学図書館 33(2):164-176,1986.)
(2)開庫とその活動
V.「長與衛生文庫」の開庫
V-1.宗十郎町時代(京橋区宗十郎町6番地)
V-2.大手町時代(麹町區大手町一丁目)
(医学図書館 34(1):46-61,1987.)
(3)専斎の生誕地肥前・大村を訪ねて
VI.『松香私志』の発刊
VII.「長與衛生文庫」の利用と蔵書
VIII.専斎の生誕地―肥前・大村
IX.おわりに
(医学図書館 35(1):41-58,1988.)
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(以下、次回につづく)
(令和4年7月16日)